1.糖尿病網膜症とは
糖尿病は近年増加傾向にあり、その罹患者の中で最も多くを占めるのが2型糖尿病である。遺伝的要因、加齢のほか、過食、運動不足、肥満、そしてストレスなどの生活習慣が誘因となり発症するため「生活習慣病」といわれるが、血糖をコントロールすることで、確実に症状を改善することが可能であります。ところが、この疾患は自覚症状がなく進行することが多いため、重大な合併症をひきおこすことが大きな問題となっています。糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、成人の失明原因のひとつになっています。
糖尿病網膜症の早期に大きく関与しているのは、高血糖状態で引き起こる細胞内酸化ストレスであることが報告されており、これによって細胞死(傷害)が誘導されます。これが、糖尿病網膜症の初期病変です。
2.研究方法と結果
【方法】
高血糖状態のモデルとして、網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)を高グルコース濃度培地で培養し、ビルベリーエキスの影響を確認しました。次に、糖尿病網膜症の初期病変に深く関与している酸化ストレスとの関係について検討するために酸化ストレス刺激(H2O2)によって細胞傷害を引き起こし、そこにビルベリーエキスと添加することで細胞傷害への影響を確認しました。
【結果】
高グルコース濃度では細胞増殖が抑制されるのに対して、ビルベリーエキスを培養液中に添加することで、細胞増殖が改善されました。また、酸化ストレスによる細胞の障害は、ビルベリーエキスの添加により抑制されました。さらには、ビルベリーエキスで処置された細胞において、酸化ストレスに対する防御機能や細胞増殖機能が高まることが分かりました。
【結論】
これらの結果から、ビルベリーエキスは、糖尿病網膜症の予防、進行抑制に貢献する可能性が示されました。