1. 質量分析イメージング法 ~アントシアニンの体内動態~
質量分析とは分子をイオン化し、分離、そして質量を検出することで物質の重さを測定する分析方法であり、現在は物質を同定するときに多く用いられる技法であります。
質量分析イメージング法(MALDI-MSI)とは、近年になって確立された新しいイメージング法(可視化する方法)であり、 LC-MSやGC-MSといった従来の質量解析法では不明であった「目的サンプルのどの部分に物質が局在するのか」を視覚的に解析することが可能になりました。 具体的には、調べたい試料にマトリックスを塗布し一定間隔でレーザーを打ち込み、マトリックスとサンプルの混合結晶をイオン化、検出します。そして、検出されたスペクトルを試料の二次元の画像と合わせることで可視化することが可能となります。
アントシアニンの体内動態は古くから研究されており、胃や腸より吸収されていることは知られていますが、その吸収の詳細なメカニズムや体内動態については、いまだに不明な点が多くあります。
2. 研究方法と結果
【方法】6週齢雄性ddY系マウスに、ビルベリー抽出粉エキスを生理食塩水に溶かし100 mg/mLに調製したものを腹腔内に投与し、20分後に麻酔し、更に20分待ってから解剖を行いました。かん流を行い、眼球のみを摘出しましたサンプルは液体窒素を用いて速やかに凍結し、-80 ℃の環境下でディープフリーザーにて保存しました。質量分析に供する前に、クライオスタットを用いて10 μmの切片を作成し、MSI用の透明導電膜コートされたスライドガラスに貼り付けました。マトリックスはDHB(2,5-Dihydroxybenzonic acid)を用い、メタノールと水を7:3の比率で混合し、50 mg/mLと35 mg/mLの二種類の濃度で1 mL調製しました。試薬を混合させる際は、超音波処理を行い、8000 rpm、2分の条件で遠心分離しました。ピペットマンを用いて上清700 μlを得ました。その後、スライドガラスにエアブラシを用いて三段階に分けて均一に塗布し、質量分析機に供しました。本研究の結果から、眼球の網膜外層に付随する筋組織にアントシアニンに存在する可能性が示されました。この技法を用いることにより、今後は組織におけるより詳細なアントシアニンの分布とそのメカニズムの解明が進むことが期待されます。
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